ファットテール:なぜ正規分布は嘘をつくのか
金融理論のほとんどは、価格が正規分布(正規曲線)に従うと仮定する。それは嘘であり、しかも高くつく――市場では、極端な事象があの曲線の予測よりはるかに頻繁に起きる。これを「ファットテール」と呼び、ナシーム・タレブとともにこれを理解すると、リスク管理の仕方が変わる。破局は、聞かされてきたほど稀ではないからだ。このモジュールは、ありえないことを生き延びる話だ。
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なぜ正規分布は嘘をつくのか
正規分布は、巨大な動きはほぼ不可能だと言う――大きいほど指数関数的に稀だ、と。だが市場の現実には「ファットテール」(高い尖度)がある――端の値は、正規分布が認めるよりはるかに重い。理論が「数百万年に一度」と置く暴落が、数十年ごとに現れる。典型的な誤りは、まさに自分を破産させうるものを過小評価する物差しでリスクを測ることだ。
ブラックスワン(タレブ)
ブラックスワン(ナシーム・タレブ)とは、稀で、影響が甚大で、事後にだけ当然に見える事象だ。誰のモデルにもなかった――87年の暴落、2008年、2020年3月。教訓は予測することではない――定義上できない――生き延びられるように取引を組むことだ。「それは起きない」に口座を賭けるな。十分な時間があれば、起きる。目標は稲妻を予報することではなく、木の下に立たないことだ。
起きてしまう「あり得ない」シグマの動き
業界用語で「6シグマ」の動きは、正規分布によれば数十億年に一度しか現れないはずだ。現実の市場では数年ごとに現れる。1987年のブラックマンデーは、理論が事実上不可能とみなした暴落だった。「これは予見不能、Nシグマの事象だった」と聞いたら、こう訳そう――間違っていたのはモデルであって世界ではない。テールは太く、だから「稀」はそれほど稀ではない。
破産リスクと非エルゴード性
致命的な罠――途中で破産するなら、平均リターンがプラスでも無意味だ。これが非エルゴード性――「多数に平均して」起きることは、「あなたに時間をかけて」起きることと違う。連敗がゼロに導けば、ゲームは永遠に終わり。復活させる「平均」などない、もう参加していないのだから。だから資本を破産から守ることは、期待リターンの最大化より重い。
凸性とテールヘッジ
ファットテールへのタレブの答え――凸性を探せ。多くの時間は小さく上限つきで損をするが、極端な事象が来たときに大きく――不釣り合いなほど――勝つ構造だ。保険の論理だ。小さく一定の保険料を払い、暴落で大きく受け取る。大半は逆をやる(何度も少し勝ち、一度で大金を失う)――それが凹性で、ファットテールの世界では破産させる。
バーベル戦略
以上すべてを実践する形――バーベルだ。「中くらい」のリスクを全体にまぶすのではなく、二つの極端を組み合わせる。資本の大半を非常に安全なもの(破産回避)に、小さな一部を非常にリスキーで凸なベット(良いテールを捕る)に。だましの中間には何も置かない。こうして悪いブラックスワンに対して鎧を着つつ、良い方には身をさらす――最大損失は上限つきで。
テールの測り方(と、それが失敗する理由)
尖度はテールの重さを測る指標ですが、少ないデータから推定するのは危険です。この統計量は、まさに測ろうとしている極端な値そのものに依存するため、暴落を含まない標本では安心できる尖度が出て、暴落を一つ含むだけで跳ね上がります。だから本気の運用者は「尖度はいくつか」ではなく「この系列で最悪の日がもう一度来たら、いくら失うか」と問います。統計的モーメントではなく、シナリオです。実務上は、指数の−7%や寄り付きのギャップといった具体的な変動でストレステストを行い、安定するまでに数十年分のデータを要する数値に頼らないことです。